
私について、誰もが気になる事といえば、きっとこのニャンコの事だと思う。
名前は鮎二郎という。
近所を迂路つく野良猫共の中、たった一匹目を付けたコイツに、
毎夜キャットフードを与え、無理に懐かしたのが鮎二郎である。
鮎二郎という名前は、私のお気に入りの名前である。
鮎二郎という名前は、昭和の文学者の「井伏鱒二」からきています。
丁度その頃、新潮社の「山椒魚」という本を読んでいて、
生涯キザな東京弁と戦い続けた鱒二らしい、「嘘でしょ」というほど濃い方言の滝に浴びながら、
『お前は、鮎二郎に決めたがな』と、つたない方言の空マネで付けた名前を付けました。
ちなみに、井伏鱒二といえば、早稲田大学を教授のセクハラにより退学したようで、
どんな美男子じゃ、と好奇心そそられ新潮文庫のブックカバーのポラロイドを見れど、
なんだか、昔CMでやっていた『パッとサイデリヤ〜』のおじさんそのもので、
すごくガッカリしました、余談ですけど。
でも、「山椒魚」という本自体は、大変魅力的で、その魅力っぷりは、
やはりオダギリ・ジョーを遥かに凌ぐ、としか表現の仕様がありませんでした。余談ですけど。
鮎二郎・・・、きっと名前がいんだと思います。
鮎二郎という名前が、私名前であったなら、どんなに幸せであろうか・・・。
さぞ、私は魅力的であったに違いない。
この猫は大親友だから、私の大好きな名前を付けてやった・・・、少し惜しかったかもしれない。
私が卑しい心でいっぱいの時なんかは、私の喉の奥から、もったいないおじさんが顔を覗かせます。
グイっと飲み込めば、ゴリッと喉が痛いのですが、我慢します。
もういいんです。鮎二郎は無二の親友だから。
鮎二郎はメガネが大好きです。
鮎二郎はいつだって、寝る時には、私の股間を枕にするのですが、
突然ワッと起き上がったかと思うと、枕元のメガネを食わえて、何処かに行こうとします。
いつも柄を食わえるものだから、プラスチックで出来た柄はガタガタ。左だけネジがゆるんで開いてしまっています。
股間に衝撃を受けた私は、いつもビックリして起きてしまうので、
メガネを奪う鮎二郎を取っ捕まえるのですが、
起き損ねた時なんかは、
いつも庭の梅の木の根元に、だらしなく捨ててあるので、
なんだか淋しくなってしまいます。

山椒魚 井伏鱒二(いぶせ ますじ)
島のじじぃとばばぁのウサギを巡る口喧嘩の話「シグレ島斜島」や、ダムに沈む村に住む行政に憤るじじぃと、その隙にしじじぃの孫娘をモノにしようとする主人公の話「朽助のいる谷間」など、素敵なお話が盛りだくさん。