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2007年10月11日

鉄拳制裁


私は、少年時代、少女を殴りました。
殴ったと言っても、歯が抜けるほど強くぶったわけではなく、
“もうっ”と肩を押した程度なのですが、
それはアキコちゃんがウサギに餌をあげるとき、
大好物のオオバコに交えて、こっそりネギを混ぜていたからです。

ウサギはネギのような刺激が強いモノを口にすると、死にます。

それを知っていた私は、アキコちゃんがオオバコにネギを混ぜている姿を目にし、
半狂乱で飛び上がり、思わず“もうっ”と押してしまったのです。
フンまみれの飼育小屋の土の上にドッテと倒れ込んだおかっぱ頭のアキコちゃんは、
三日月のような恐ろしい目で笑って、私を見上げていました。

先日、私はおじさんを殴りました。
これはもう、頬がヒリヒリするくらい強くぶちました。
それはおじさんが田んぼ脇の小川にカップラーメンの汁を捨てようとしていたからです。

そのガテン系の巨漢なおじさんは、田んぼ脇の空き地を駐車場にするため、
一人で舗装工事に取り組んでいました。
いくらおじさんがガテン系とはいえ、その空き地は小さな田んぼ一つ分もあるのですから、
1日2日で簡単に仕上げれるものではありません。
地面を平にならし、大きなタライでコンクリートの粉と水を混ぜて作り、それをムラなく広げる、
労働者の涙、それがうまくできないと、おじさんはうんと叱られるのです。

その日もおじさんは朝から、残り畳20畳分程を舗装するため、
トンボやローラーを駆使し、昨日もならした地面を、
念のため今日もならし直していました。
時間も頃合いになり、おじさんはマルちゃんのカップラーメンを食べ始めました。

常時仕事場に持ち出す、小型のガスコンロとペットボトルに入れてきた水道水で湯を沸かします。
おなかいっぱいにカップ麺を食べたおじさんは、
いつも汁の捨て場にこまり、田んぼ脇の小川にそれを捨てます。

私は、それを知っていました。だから、私はずっとこのメタセコイヤの木の陰で見張っていたのです。
この小川にはメダカが住んでいるのです。
しかしここ数日は、メダカがプカリ白くなって浮かび、水の流れが溜まった渦の中で、
クルクル泡と一緒に浮かんだり沈んだりするのを目をしていました。
すべてこのおじさんの仕業だったのです。

私はココゾと、勢いよく木の陰から飛び出し、おじさんの頬をピシャリとはたきました。
おじさんはヨロヨロし、ビシャンと小川の中に落ちてしまいました。
予想外の出来事に私は動じました。
小川でびしょびしょになったおじさんが、
うさぎのような目でコチラを見つめます。
私はもう、すっかり弱気です。おじさんはこれからビショビショのまま、
昼から厳しい労働に堪えねばいけません。全て私のせいです。
“ごめんなさい”と言えない私は、
「めがだが、しぬだろがー」とほとんど空を仰ぎながら、うわずり声で叫び、
その場を立ち去ります。

生き物は大切に。