王子道化
都会の冬はずいぶん淋しいですね。
日頃のにぎわいをひっぺはがした、
裏側が透けて見えているみたい、
木材の骨、合板のパネル、パネルの位置を特定するための、
汚くペンキで書きなぐられた数字の1.2.3、
そんな閑散とした光景が丸見えで、
いつもの電信柱すらヨソヨソしく、
静かに沈む薄いグレーの町並みに、
空虚なクリスマスソングが浮き足立って宙に浮き、
白い曇しかない空に、虚しく吸い込まれてゆきます。
半ズボンの少年は、
大人から見れば馬鹿なのですが、
当人にとっては、3月まで半ズボンで乗り切る事が誇りなのです。
私の通っていた小学校には、
鼻水の「ショーチー」とポーカーフェースの「トーチー」がいました。
彼らの半ズボンは私の学年ではずいぶん有名でした。
彼らは、いつ何時でも、白いブリーフがはみ出しそうなくらい、
短い短パンを、我が誇りのように見せびらかし、
また、ソレを見せつけられる私たちも、
「すいぶん寒かろう」「平手で思いっきりぶってやろうか」などと言って、
敬服し崇高するばかりでした。
雪が降った日などは、彼らは本当にスターだったのです。
真っ白い景色の中、白いブリーフをはみ出させ、
まるでどこかの王子のように、
ツンと顎を上げ、ランドセルを背負い、
裸の足はそのまま長靴の中まで伸び、
その一歩一歩踏み出す足は、ピンと伸びたときに、
そこに彼らの誇りすら感じられ、その足がそのまま、
一定のリズムを辿って、真っ白な雪に刺さってゆく、
「キレイ・・・」我々普通の小学生は、
まるで高貴なものを見るような目で、胸を弾ませるばかりでした。
バチンと誰かが、その美しい裸足に雪玉をぶつけました。
「あっ」
硬直した足に、ぶつかった雪の形に赤い模様が浮かび、
王子は寒さを思い出します。
気品を失った王子は、道化。
真っ赤に変色する足は、好奇心おう盛なちびっ子達のいいおもちゃ。
怯んだが最後、子供達に黒山のように囲まれた道化は、
その足に、もう立てなくなるくらいまで、
雪玉をぶつけられ、白い肌は惨めに肉肉しく、
赤く変色し、ぷっくり膨れ上がることしかできませんでした。
鼻水の「ショーチー」とポーカーフェースの「トーチー」。
彼らも、もう大人です。なにしてるのかしら。