生家
『捨てられた野菜』
冬の田舎にゆくと、このような白菜の屑がベッタリ、
畑の野菜の芽を寒さから守るビニールシートに、
くっついて捨ててあるのを目にする事ができます。
私には、この捨てられた白菜の屑をお布団にして、
薄くて高い冬の空を眺めながら、
暖かい土の上で眠った記憶があります。
きっと、勘違いです。
しかし、右腕に乗った、腐った白菜のヌルヌルした温かさは、
まだ、右腕の皮膚が覚えており、
太ももに乗った痩せた人参の葉は、
未だに付着している気さえもし、
背中に当たる、畑の柔らかい土の暖かさは、
もう一度触れてみたい、
中毒のように未だに私は欲しています。
『サンショウウオ』
私の生家近所の川、この辺りは峠の開きにできた山村で、
枕で寝ていても、カエルの声と、川の水がぶつかる音が聞こえるくらい、
静かで、上流の流々とした激しい川が流れる所。
その、川の水の溜まり、岩のゴツゴツした比較的緩やかな流れの所で、
幼い私は、いつも沢ガニを捕っては、ぽーんと川の流れの激しい所に、
投げ捨てて遊んでいました。
沢ガニは、いつも大きな岩をめくると、
粒子が細かく柔らかい砂の煙幕の中から、
スッと、伸びるように出てきます。
ある日、いつもより大きな岩をめくると、
そこにのぞいたのは、とても大きなサンショウウオ。
私はワッと驚いて、浅い水溜まりに尻餅をついてしまいました。
ポッカリとパンツまで濡れてしまったお尻は、
グジョグジョと気持ちが悪く、
私は、両手を前に、お尻を後ろに突き出し、
ヨチヨチと内股で、山の麓にどっしりと構えた、
藁葺きトタン屋根の頼もしく古めかしい生家まで、
細いあぜ道を辿って帰る事を、余儀なくされました。
『毒』
都会の毒にずいぶんヤラレました、
イナカに帰ると、自分だけがフケツみたい、
ずいぶん不誠意実な、
ズルい男になりました、
マックロに皮肉れた根性は、
まるでマッカなドロドロ、地獄のようね、
プツッと針をサシテおくれ、
スーッと毒は抜けるかしら。