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2008年02月14日

微笑

[1]
山にぐるぐる巻き付く螺旋状の道路、
登れば登る程、田畑も家も小さくなって見晴らしがよく、
舗装の悪いギザギザ付きの道路に、
ポッケに入れてきた青や赤のビー玉を、
ガチンガチンと転がせば、
白い道をふらふら斜断して、すぐに絶壁、
ガードレールを潜って、次から次へとアーチを放って下の薮に落ちてゆく、
微笑、結局、それにみんな憧れてるんです。

[2]
町で出会う小動物には、思わず微笑。
にんまり笑った笑顔で振り向きます。
だって恐いんですもの。
スズメだって、小麦をつつきながらも、
虎視眈々と私の目玉を狙っているわけだし、
野ネズミだって私の足の指を爪も残さずかじるつもりで、
物陰をこそこそ飛び回っているわけだし、
バッタだって口から黒い毒を吐きます。

ただただご機嫌を損ねてしまわないように、
額に粒のような脂汗をたんまり溜めて、
真っ青な唇をがたがた震わせ、歪む口の端は微笑。
微笑なんて、みんな嘘っぱちなんです。とりつくろってるんです。

[3]
幼い頃、仏壇の奥に輝く、金色の小さなお釈迦様の微笑が、
かわいくって、かわいくって、
いやらしさも、嘘っけも何もなくて、
もうそれは雑草のようなキレイな微笑。
ぼろぞうきんの微笑、蝉の抜け殻の微笑。
掬われたいが為に、こっそり仏の間に忍び込んで、
うっとり頬に手を当て、柔らかい口の端、
ミカズキのような緩やかなアーチを描く、やさしい目を、
華奢な腕を、いつまでも、畳の間に立ちすくんで見つめる少年。


だから、私は、とっても微笑が上手になったのね。
いやらしい、モノ乞うニヤニヤ笑い、
取り繕うためのガチガチ震えた恐怖の微笑。
ただ、ビー玉を高い所から落っことした時の、
ひゅっと心臓を一瞬心臓を掴まれるような緊張、
その後の微笑だけが本物。きれいでしょ。