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「春」
ぽかぽか陽気に、景色もなんだか白みがかって明るい。
やんわりとした明るい空気が鼻にかかって、
くしゃみが3回も出たので手がグシュグシュ、春なのね。

暖かいので、恋でもしようかしらと、
いつもの疲労が吸い付く重いアスファルトを、
踏んで、踏んで、今日は白味がかった街に出ます。

ごたごたした人ごみで見かけた、
あら、きれいな人。
華奢な肩にかかったグリーンのセーター。
後ろを追いかけてみます。

グリーンのセータは、コカコーラの自動販売機の横、
路地に続く、細い桜が塀から覗く曲がり角を、
短い髪をフッとふって折れたので、
私も後ろから、こてんと折れました。

私は、すっかり色きちがいです。

ウソ、私は今日も部屋にいます。


「川」
コチンと目の前の石ころを蹴とばすと、
向こうの石ころに当たって、2つとも、
昨日の雨で黄土色に濁った川に落ちてゆきました。

川底の岩に水と水がぶつかり、
川面はどぼどぼと膨らんだり沈んだり、
その流れの部分だけが透明で、キラキラ光っています。

足下の毛虫草の穂を千切って、
ぽーんと水面に放ると、
後ろから流れてきた桜と一緒に、
水面の淀みに吸い込まれていきました。

桜の花びらは、渦を巻いてクルクル回っていました。
私が放った毛虫草は、沈んだり浮いたり沈んだり・・・
どこかに行ってしまいました。

「桜」
雨にぬれてじわりとピンクに滲んだ桜は、今日、ますます赤みを増し、
雨を吸って重くだらりと垂れた枝先が、
いま、道を歩く私の鼻の先にあります。


目の前の、雌しべと雄しべをこちらに向けた湿った赤い花弁を観ていると、
何だか何も見えなくなってしまって、
そっと花に手を伸ばしたとき、
ワン!と後ろから犬に鳴かれ、
私はそのまま犬に追われました。

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