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2008年06月12日

小指

「オニヤンマ(セイカ)」

応接間に続く天井の低い廊下をミシミシと、
1歩足を踏み出すたびに鳴る床を踏み、
歩く私の右手からコツンコツンと窓が鳴ります。

おや、と思い音のする方へ寄ると、
開けっ放しの窓から入ったオニヤンマがレースのカーテンに引っかかり、
目玉だらけの小さな頭をコンコンとガラスにぶつけ、もがいているのです。

思わぬ大物を手にしたラッキーボーイは、
丁寧にオニヤンマのイガイガの足をレースのカーテンから外してやり、
空のコーヒー瓶のふたを緩く絞め、
その中で縦になってカサカサいっているオニヤンマを、
頬杖付いてしばらく観察した後、そのまま外へ逃がしてやりました。


「ヤモリ(トカイ)」

日が落ちて何時間もたち、
人通りもすっかり少なくなった歩道の脇、
蚊の殲滅を呼びかける自治体のボスターが貼られた連絡版立つ、
黄色く薄汚れて入るものの、貫禄のある白く大きく長い学校の壁の中腹に、
ヤモリがピタリ。

懐かしがるわけでもなく、憎いわけでもなく、
私は足下にあった小さな小石を拾い上げ、
コツンとヤモリの脇の壁に軽くぶつけてやり、
ヤモリを逃がしてやりました。


「蚊(ヒトリグラシ)」

左手小指の第一関節の辺が、
赤く腫れ、膨れた皮膚はカチカチに固くなって、痒い。
カチカチに赤くなった第一関節を、
ぶっきらぼうにしっちゃかめっちゃかベットに擦り付けますが、
痒みは収まらず、
固い皮膚に爪をグッと何度ペケポンしても、
内から沸き上がるウズウズした痒みは、
小指に熱を帯び始め、ますます収まる気配がありません。

蚊。

カチカチの小指の小さな腫れは、
水たまりののように柔らかく変わり、広がれるだけ広がってゆきます。

ベットに擦りすぎて、赤く腫れた小指に広がってゆく青白い水たまりを、
私は右拳でぎゅっと握りしめ、
たった1匹の蚊に占領された我が部屋をトボトボ出てゆき、
蚊取り線香を求めてコンビニにゆくのでした。