晩夏
『向日葵』
壁の塀から覗く私より背の高い向日葵は、
茶色くギュッと締まり、
おじいちゃんの首のように筋が浮き出た、
か弱い茎をかろうじて高く高く挙げ、
種だけの顔をだらりと垂れます。
パチンと私が手を叩くと、種は全部ポロポロ落ちてしまう。
種の側に転がる蝉。太陽は西。雨がまた降る。
『雲』
みんなが、私を嫌って笑ってる。
胃が、キリキリ舞う。
熊手で空を掻くような言葉が、
頭を空っぽにしてゆく。
もやもやの厚い雲が低く低く降りてきて、
首まですっぽり覆ってしまう。
蹴散らしてやる。
すっかり蹴散らされたのは、私。
『風』
暗くなり始めると、
涼しさが私の腹を撫で、
お腹がゴロゴロ言います。
おでこに汗が滲む、夕立かしら。
『猫』
窓の隙間から忍んでくる風が、
鮎次郎の鼻を触るせいか、
鮎次郎はテーブルの下に潜ってしまい、
縮こまって震えてます。
気の毒に思い、私は鮎次郎を引っぱり出して抱いてやりました。
ゴリゴリとなる手首。
歯を立て噛み付いて鮎次郎はどこかへ行ってしまう。
血 砕 ほにぇ
『テーブル』
薄明るい台所のテーブルの上に林檎が転がる。
季節は逆なので、まだ小さい小ぶりの林檎。
仏間に添えられた、少し萎んだ林檎を取ってきて横においてやると、
なんだか気が合うみたい。
仲良しかしら。
『茄子』
乳母車の上に、茄子が並ぶ。
どこへとも知れぬ、持ってゆく。
作っては、作っては、運ばれてゆく。
茄子を受け取るしわしわの手。
しばらくの、おしゃべり。
大きな山の麓を、祖母が、歩く。
『霧』
雨上がりに、山の巻く白いマフラーがオシャレ。
おじいちゃんの手ぬぐいのように、かわいいんですもの。
私なんてちっともオシャレじゃありません。
かなわないんです。
柄の使い方も、スラックスの履き心地も、
手ぬぐいの結び方も。
風が吹く、流れれて、小さな繊維はチリチリに、霧が散る。