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2008年10月09日

帰路




青い空がまだスコンと抜けた時間帯に、
私は家に急いで向かうのでした。

右手にもう穂がふくれ始めた稲畑が広がるあぜ道を、
ひとりそそくさと歩いていると、
彼岸花を手にした、大きな赤いランドセルを背負った半ズボンの少年が、
互いに石ころを蹴り合いこちらへ向かって帰宅していました。

小太りの方の少年がエイと大きく蹴った石ころが大きく軌道を外れ、
私の靴にゴスンと当たりました。

私は知らないふりをして帰路を急ぎました。


  6体並ぶ地蔵の周りににょきにょき伸びる彼岸花が
  青い土手にいくらでも生えているので
  欲張って大きなものを5本手折って
  母にプレゼントしました。

  縁起でもないとポキンと折って捨てられてしまいました。

  家に持ち帰れば火事になるというあの華は、幼い私にもまるで
  細く先をくるりと巻いた赤い花弁が、
  伴大納言絵巻の業火のような恐ろしい火の描写に見え、
  ポキンと折って出る汁も汚らわしく、
  二度と手で触れるたくなくっちゃって、
  群れを見つけると、足をブンブン振り回して
  ゴム靴でポキンポキンと退治してやるのでした。


路の脇に、何重にも、腰の辺りまで積まれた何列にも瓦が並ぶその上に、
鮎次郎がおりました。


  同級生が女の子二人しかいなかった私には、
  サッカーや野球などのボール遊びなど夢の又夢で、
  毎日作業的におままごとを済ますのでした。
  仕事から帰ったおとうさんにAちゃんが差し出してくれた、
  お椀一杯に盛られた一輪の多きな彼岸花に、
  私はギョッとしながら、火の不幸が決定してしまったこの家庭に、
  大黒柱として責任を感じながら、
  おかあさんが出してくれた、何かわからない食べ物を
  おいしくいただくふりをするのでした。

瓦の上の鮎次郎には(なんと)連れ合いがおり、
メス猫と大人しくピタリくっついて黄昏れていたのですが、
私が突っ立って眺めていることに気がつくと、
ナーンと瓦から飛び降り走り去り、
その後をメス猫もナーンと追って行ってしまいました。

瓦の傍らに、一人残された私は澄んだ空に胸を掴まれるように突然寂しくなり、
私は知らなかったふりをして帰路を急ぎました。